ノジギク(野路菊)考
20121210

1、はじめに
まとめてみようと思ったきっかけ
2012年12月初旬、三木市にある夫の友人宅で見たノジギクの花。↓
楚々と気高く咲く姿に魅了された。

お土産にいただいてきたノジギクの切り花
青い花はノコンギクでこれは自宅庭に咲いていたものを加えた(葉が全く違う)。
もともと以前から自宅の裏庭にノジギクがあったが(多分亡き母が植えたと思う)、どうも花びらがもっと短く太く隙間なく花びらが着いていたように思う。繊細な印象のこの花と少し異なるような気がした。違うものか、ノジギクの変異なのか、少し調べてみようと思い立ったわけである。
今年の写真はないが、2009年のものをさがしてきた。
どうでしょう。上のノジギクとは印象がちがいますね。

2,ノジギクについて調べてみる
まず検索でノジギクの画像を多く見比べたところ短い花びら、長めの花びらの、両方を目にすることができた。
個体差だろうか。

ノジギクは日本固有種の野菊で、牧野富太郎博士が命名。
そこでまずは牧野博士の『牧野新日本植物図鑑』の登場。母の形見、わが家のお宝である。
1963年版 写真でなく細密な植物画
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ノジギクの特徴・・・まとめ
日本固有種、野菊(野生の菊)
兵庫県辺り以南瀬戸内を挟む四国九州に分布
東限,北限は神戸市辺り?(最近の研究から)
牧野博士が命名

茎の上部で枝分かれし頂部に白い複数の花 花数が多い
総苞(そうほう)は三重、外片は短く灰白色の毛
葉は卵円形3〜5裂、少数の鋸歯
基部は心臓形または切形(ほぼ水平)裏面には白っぽい毛
花も葉もよい香りがある
キバナノジギクもある

良く似たもので
リュウノウギク(竜脳菊)

これも日本固有種の野菊
開花時期が遅い
ノジギクの花に似る
よい香り
福島県以南に分布
葉の基部は心臓形や切形にならず広いくさび形
総苞は内外ほぼ同じ長さで外片は狭い

ノジギクとリュウノウギクのちがい
の違い
ノジギクの葉の基部は心臓形、水平、リュウノウギクの葉はくさび形
(ただしノジギクの葉は変異が多く、基部が内側に切れ込んだものもある。)
頭花
ノジギクは先端に複数つくことが多くて全体に花数が多く華やかだが、リュウノウギクは頭花は少ないのでややさびしい
総苞が三列の一番外側は短い,リュウノウギクはほぼ同じ長さ

野菊と呼ばれるのは多くはこのノジギクとリュウノウギクなど野生の菊の総称。
ともに日本固有種。香りが良い

3,牧野富太郎展にて

折しも神戸市花と緑のまち推進センターで牧野富太郎展が開かれていた。
牧野博士は六甲山をはじめ神戸で植物採集、調査を重ね、美術品のコレクションで有名な池永孟の援助で一時期、会下山(えげやま 神戸市兵庫区)に植物研究所があったという。その足跡を辿るパネル展示があった。
このノジギク、リュウノウギクについも説明と実物の展示があった。
この説明は上の本をコピーしてあることがわかる
その花、葉と総苞
 ノジギクとして展示
葉は切れ込みが深い。基部が水平というのがよくわからない。総苞は外側が短いのはあたっている。

リュウノウギクの花の展示
 リュウノウギク
上のノジギクとは葉の形が明らかにちがう。これをくさび形という? 総苞の外が長いかな?

4、ノジギクの群生地探訪

神戸市須磨区横尾山のノジギク群生地(姫路市大塩の自生地からゆずり受けてふやしたもの)があると聞いて訪ねた。
山の斜面が一面白い花で覆われていた。12/8撮影
現地の看板
横尾山の斜面 北西側
圧巻のノジギク
南西側 明石大橋が見える
 
花びらは長いものもあった                 葉の基部は水平 あたっていますね

 キバナノジギク
黄色もあった

5,裏庭にあるキクをノジギクと結論づけていいか?
   
左知人宅のは葉が水平はちょっと苦しいが頭花は先端で分かれて花数が多いこと、総苞は外側が短いこと、香りがある点でノジギクである。
右の自宅裏庭については今花がないが(下の写真2枚はかつての花の写真)葉の基部が水平、香りがある、花数が多い、花びらが太めで短い花もあることを確認したのでノジギクである
花びらの長さ、枚数など、また葉の形態も個体差、変異が大きくて、葉だけで同定は難しいが、ノジギクの特徴を3,4点確認できたことでノジギクとした。
 
 
自宅裏 2010年の花(切って花束にしている)      同じく2009年の花
                       
なお花と緑のまち推進センターの相談員の先生に電話でおたずねしてみた。すでに展示は終了していて、一般論でしか話せなかったがノジギクの決めてについては個体差が大きいこと、交配していることもある、確実にするためには大学で遺伝子を調べるしかないとのことであった。

6,終わりに
2010年11月、奈良春日大社の万葉植物園で野路菊を写していた。↓
 
 万葉集では「ももよぐさ」と詠まれていたそうである。

「道の辺に野菊の花を侍らしめ幻の人に逢いに行くなり」清香
亡き母が詠んだ歌。この野菊はノジギクのことであると思われる。野の草を愛し万葉の世界に憧れていた母であった。

                                完